「乗務等の記録」
今回は「乗務等の記録」を取り上げる。
皆さん方は「乗務等の記録」というと、真っ先に何が思い浮かぶのだろう?
運転日報だろうか、それともタコメーターの記録だろうか。そのどちらも正しくて、どちらも正しくないのが「乗務等の記録」なのだ。
法令、具体的には貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条に規定されているのだが、
「事業用自動車に係る運転者の乗務について、当該乗務を行った運転者ごとに次に掲げる事項を記録させ、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。」
との定めがあり、いくつかの記載事項を示している。
では、どちらも正しくて、どちらも正しくない とはどういうことなのか。小生が指導員として事業所巡回を実施していた昔むかし、乗務記録を見せて下さいというと必ず出てきたのが、いわゆる運転日報である。極端な話、管理状況が極めてお粗末な事業所でも必ずあるのが運転日報だった。何せこれが運賃請求の基になるのだから、内容はどうあれ必ずあるといってもよい今も身近な存在である。
しかしながら、法令に言う乗務等の記録は、運転日報とは似て非なるものである。何故なら、記載すべき事項とされているのが、
一 運転者の氏名
二 乗務した事業用自動車の自動車登録番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示
三 乗務の開始及び終了の地点及び日時並びに主な経過地点及び乗務した距離
四 運転を交替した場合にあっては、その地点及び日時
五 休憩又は睡眠をした場合にあっては、その地点及び日時
六 車両総重量が八トン以上又は最大積載量が五トン以上の普通自動車である事業用自動車に乗務した場合にあっては、貨物の積載状況
七 道路交通法 (昭和三十五年法律第百五号)第六十七条第二項 に規定する交通事故若しくは自動車事故報告規則 (昭和二十六年運輸省令第百四号)第二条 に規定する事故(第九条の二及び第九条の四第一項において「事故」という。)又は著しい運行の遅延その他の異常な状態が発生した場合にあっては、その概要及び原因
八 第九条の三第三項(※運行指示書による指示等)の指示があった場合にあっては、その内容
となっているからだ。
一般に運転日報には、日付、運転者の名前、車番、荷主名、荷物の内容、行先、走行距離、運賃等が記載されている。しかし、前記の三、五、六、七、八はあまりというか全く記録されていないものもある。その意味で、運転日報=乗務等の記録とはならない。もちろん、運転日報≒乗務等の記録ではある。
それではタコメーターの記録はどうだろう。こちらは運転日報よりは乗務等の記録により近いものと言える。それは、安全規則8条第2項に
「一般貨物自動車運送事業者等は、前項の規定により記録すべき事項について、運転者ごとに記録させることに代え、道路運送車両の保安基準 (昭和二十六年運輸省令第六十七号)第四十八条の二第二項 の規定に適合する運行記録計(以下「運行記録計」という。)により記録することができる。この場合において、当該一般貨物自動車運送事業者等は、当該記録すべき事項のうち運行記録計により記録された事項以外の事項を運転者ごとに運行記録計による記録に付記させなければならない。」
との規定があるからだ。つまり、(運行記録計による記録+必要事項)=乗務等の記録 となる。もっと言えば(運行記録計による記録+運転日報)=乗務等の記録 の可能性もあるということだ。
ただし、ここでどうしても注意しておかなければならないことが一つある。
それは「当該乗務を行った運転者ごとに」記録し、保存しなければならないのだ。小生の昔むかしの経験では、ほとんどの事業所は、運転日報もタコメーターの記録も車番ごとの管理となっている。よって、この部分が決定的にイコールとはならないのだ。
何故そうならないのか。コンプライアンスをちょっと横へ置けば、事業所で作られる書類の大部分は、事業経営上言い換えれば商売上必要だから作られているのであって、一方の法令の定めは輸送の安全確保のために作るべきものという根本的な違いがあるからだろう。
次回は「運行指示書」について考えてみたい。
皆さん方は「乗務等の記録」というと、真っ先に何が思い浮かぶのだろう?
運転日報だろうか、それともタコメーターの記録だろうか。そのどちらも正しくて、どちらも正しくないのが「乗務等の記録」なのだ。
法令、具体的には貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条に規定されているのだが、
「事業用自動車に係る運転者の乗務について、当該乗務を行った運転者ごとに次に掲げる事項を記録させ、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。」
との定めがあり、いくつかの記載事項を示している。
では、どちらも正しくて、どちらも正しくない とはどういうことなのか。小生が指導員として事業所巡回を実施していた昔むかし、乗務記録を見せて下さいというと必ず出てきたのが、いわゆる運転日報である。極端な話、管理状況が極めてお粗末な事業所でも必ずあるのが運転日報だった。何せこれが運賃請求の基になるのだから、内容はどうあれ必ずあるといってもよい今も身近な存在である。
しかしながら、法令に言う乗務等の記録は、運転日報とは似て非なるものである。何故なら、記載すべき事項とされているのが、
一 運転者の氏名
二 乗務した事業用自動車の自動車登録番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示
三 乗務の開始及び終了の地点及び日時並びに主な経過地点及び乗務した距離
四 運転を交替した場合にあっては、その地点及び日時
五 休憩又は睡眠をした場合にあっては、その地点及び日時
六 車両総重量が八トン以上又は最大積載量が五トン以上の普通自動車である事業用自動車に乗務した場合にあっては、貨物の積載状況
七 道路交通法 (昭和三十五年法律第百五号)第六十七条第二項 に規定する交通事故若しくは自動車事故報告規則 (昭和二十六年運輸省令第百四号)第二条 に規定する事故(第九条の二及び第九条の四第一項において「事故」という。)又は著しい運行の遅延その他の異常な状態が発生した場合にあっては、その概要及び原因
八 第九条の三第三項(※運行指示書による指示等)の指示があった場合にあっては、その内容
となっているからだ。
一般に運転日報には、日付、運転者の名前、車番、荷主名、荷物の内容、行先、走行距離、運賃等が記載されている。しかし、前記の三、五、六、七、八はあまりというか全く記録されていないものもある。その意味で、運転日報=乗務等の記録とはならない。もちろん、運転日報≒乗務等の記録ではある。
それではタコメーターの記録はどうだろう。こちらは運転日報よりは乗務等の記録により近いものと言える。それは、安全規則8条第2項に
「一般貨物自動車運送事業者等は、前項の規定により記録すべき事項について、運転者ごとに記録させることに代え、道路運送車両の保安基準 (昭和二十六年運輸省令第六十七号)第四十八条の二第二項 の規定に適合する運行記録計(以下「運行記録計」という。)により記録することができる。この場合において、当該一般貨物自動車運送事業者等は、当該記録すべき事項のうち運行記録計により記録された事項以外の事項を運転者ごとに運行記録計による記録に付記させなければならない。」
との規定があるからだ。つまり、(運行記録計による記録+必要事項)=乗務等の記録 となる。もっと言えば(運行記録計による記録+運転日報)=乗務等の記録 の可能性もあるということだ。
ただし、ここでどうしても注意しておかなければならないことが一つある。
それは「当該乗務を行った運転者ごとに」記録し、保存しなければならないのだ。小生の昔むかしの経験では、ほとんどの事業所は、運転日報もタコメーターの記録も車番ごとの管理となっている。よって、この部分が決定的にイコールとはならないのだ。
何故そうならないのか。コンプライアンスをちょっと横へ置けば、事業所で作られる書類の大部分は、事業経営上言い換えれば商売上必要だから作られているのであって、一方の法令の定めは輸送の安全確保のために作るべきものという根本的な違いがあるからだろう。
次回は「運行指示書」について考えてみたい。
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